僕はまた、旅に出る。

僕はまた、旅に出る。

2019 7月 長野駅〜善光寺さんぽ(とカフェ紹介)

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七月初旬。長野、善光寺に行ってきました(高雄編はもう少々お待ちください…)。その時の旅行記です。今回は小説風に紹介してみようと思います。 

 

 新幹線に乗り込んで、一時間弱。長野駅に到着した。改札を抜け、善光寺方面のロータリーへと出る。振り返ると巨大な駅舎が目に映る。空は曇天。初夏のはずが、長く続いた梅雨のせいか、暑さは感じられなかった。

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 交差点を抜ける際、何やら街の様子がいつもとは違うらしいことに気づく。どうやら祭が開催されているらしい。しばらく歩くと、道路は歩行者向けに開放され、善光寺へと続く一本道は、寺へと近づくにつれ、活気に増していた。

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 どこからともなく、賑やかな掛け声が響いてきた。視界に動く赤を捉える。祭の一行が徐々に徐々にとこちらへ近づいてきた。

 獅子と山車。それら交わった姿は日本版チャリオット、とでも言おうか。扇を先導に、絢爛屋台が石畳を練り歩いていく。

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 獅子の一団が通り抜けていくと、僕らは善光寺の入り口前まで到着していたことに気づく。仁王門を抜けると、華やかな仲見世通りは人で賑わっており、人波の先には巨大な山門が聳えている。

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 山門は建つ、というよりも鎮座する、と形容した方が正しいと思えるほどに頑丈な作りをしていた。チケットを手に、木造の急階段をゆっくりとのぼっていく。街の方へと身を翻すと、長野の市街が広がっていた。

 門から離れれば離れるほど家屋やビルが立ち並び、建築物が近代的になっていく様は不思議そのもので、寺が時代に取り残されたのか、寺が世界を侵食しているのか。建築物のグラデーションが、僕に長野という街を強く印象付けさせた。

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 門の回廊を時計回りに進んでいく。目的の善光寺本堂が現れた。巨大な屋根に、金の装飾。白の幕は清廉さを際立てている。 

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 門を降り、本堂へと足を運ぶ。白幕をくぐると、空が広がっていた。巨大な柱が高い天井を支えている。他の寺と違うのか、仏様が乗る雲が、地上に近づいてくるように雲の尻尾を天に向かってたゆたわせている様子が描かれていた。この街のあたりで一番高いこの善光寺が、仏様に一番近い場所であり、ご利益があることを表しているのだろう。

 ほのかに薄暗い室内には、天井から吊るされた仏具、玉手箱のような重箱が並べられていた。繊細な彫刻や重厚な色が存在感を際立たせていた。

 僕は改めて気づく。僕は何も知らないのだ、と。仏具に彫り込まれた植物の名前。や作り込まれた建築物の名前。並ぶ漢字の経の意味。ただ、「綺麗」だったり、「すごい」としかそれを形容できない自分が、なんだか未熟で浅はかであることを僕に思い起こさせた。だからこそ、古来より宗教家に教養があるが改めてわかったような気がした。歳を重ね、見て学んできたものの全てが、この仏殿には織り込まれているのだろう。

  奥に人だかりが見えた。お戒壇巡り、というものがあるらしい。なんでも、本堂地下の暗黒回廊へと降り、回廊を進んだ先にある極楽の錠前に触れることで、来世の極楽浄土を約束される、というものらしい。列に並び、途中に仏前に念を唱えると、地下へと続く朱塗りの囲いと階段が見えてきた。右壁に手を当てながらゆっくりと階段を降りる。

 視覚が失われると、人は空気を感じることができるようになるのだと僕は知る。感覚が研ぎ澄まされるのだ。頰を流れる空気の感覚。冷えた壁を進む指先の触覚。回廊の響音を拾う聴覚。光のない中を、他の感覚が補おうと身体が鋭さを増した。

 眩しい視界が開けたのは、それから五分も経った頃だろうか。目を細めながら、安堵に包まれた僕は地上へと生還した。僕らが普段、いかに目に頼って生活しているか、お階段巡りが僕にそれを思い出させてくれた。 

 

 初めての善光寺は、僕の無知、そして日々、目に映る世界がどれだけ鮮やかなものか、それらを思い起こさせる良い旅となった。もう少し年老いて、再びこの場所を訪れた時、目に映る様々な装飾や建築、世界がもう少しだけ理解できるようになっていれば、きっとこの場所をもっと楽しむことができるようになるのだろう。

                                          おわり 

 

カフェ

観光の際、カフェに寄りました。どちらもいいお店だったのでご紹介します。

Foret Coffee

foretcoffee.thebase.in

カジュアルな雰囲気のカフェ。インテリアからは木のぬくもりを感じ、白を基調とした壁面に掛けられたキャラクターたちの様子は、アートギャラリーを思わせる。アイスコーヒーをいただきました。

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落ち着く雰囲気の中、冷たいコーヒーが火照った体をクールダウンさせた。

 

平野コーヒー

メイン通りから少し離れた住宅街のなかにある隠れ家的カフェ。時間はゆったりと流れ、コーヒーの香りが心を落ち着けます。

https://www.facebook.com/hiranocoffeenagano

 

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苦味とコクがしっかり出ている水出しだった。

豆も購入して帰りましたが、とても美味しかったです。近くにあったら通ったことでしょう。

 

おわりに

日帰りでしたが、長野駅近辺を満喫することができました。たまたまお祭りにも遭遇でき、美味しいコーヒーも飲めたのでとても満足しました。週末旅にもオススメです。