僕はまた、旅に出る。

僕はまた、旅に出る。

小説

遡上する生命、交差する今

古びた船の底、エンジンが不安定なリズムを刻んでいる。カラフルな衣装を纏う人々とは対照的に、聖なる川の岸は煤け、淀んだ印象を受ける。 初めてのアルバイトの給料で買った、小さなフィルムカメラを構え、ヴァーラーナシー、ヒンドゥーの聖地の生活を写し…

額縁に収めたい世界があるとするのなら

砂埃を巻き上げながら、愛機グリフィンは、かつて高層ビルだった砂楼の谷間をスイスイと駆け抜けていく。砂漠に沈んだ静かな都市の視界は澄み渡っている。しかしながら、防塵マスクを外すことはできない。大気に残留物質が残っているためだ。点在しながら直…